くちなしの花
夜の中でぼうっと光るような白い花 呼ぶような香りに誘われて 植え込みの迷路をたどると 白い花の木の下には女の人が立っている。 真夜中の庭、白い花の木の下で、ぼくと女の人は静かに話をした。 庭の迷路をくぐったこの場所に 好きな人からもらったくちなしの木を植えたのだ と女の人は言う。 急にあたりに白い花の香りが濃くただよい始めた 私はどこに帰ればいいのかわからないのよ ここで待ってるの くちなしの花が咲くのを待ってるのに 女の人は 綺麗な銀色の髪を流して これ以上ないくらいにたくさんの白い花をつけたくちなしの木を見あげて言う。 数日で散るはずのくちなしは どういう訳かしばらくの間 これ以上ないくらいにたくさんの白い花をつけて咲いていた。 女の人が この花が咲くのをずっと待っていたように この花もずっと女の人を待っていたのかもしれない。 ぼくの お父さまがお母さまに贈ったくちなしの花 |